「ブレイクアウトセッションの後の全体へのフィードバックが面倒な”義務“でなくなる方法」:ファシリテーターの知恵で“フィードバック”を価値ある時間に変える
読者の皆さまへ
日賑グローバルのブレットです。今回の第3回コラムでは、ワークショップにおける「ブレイクアウト後の各グループの代表による全体へのフィードバック」に焦点を当てたいと思います。
このテーマは、米国のパートナーのボルテージコントロール社によるコミュニティ「Facilitation Lab」であるファシリテーターの方が投稿していた悩みに触れたことから着想を得ました:
「一日研修の設計中なのですが、ブレイクアウト後に各グループから報告してもらうやり方で悩んでいます。メモを棒読みするだけの義務的な共有にならず、面白くて、かつ参加者の学びになるような方法はありませんか?」
この悩みに対し、多くのファシリテーターからの共感とコメントが寄せられていました。それだけ、多くの場面で共通する悩みだということです。実際、ブレイクアウト中は活気があるのに、全体報告になると一気に空気が冷える——そんな場面、皆さんもご経験があるのではないでしょうか? また、報告義務を任された代表の方はブレイクアウトセッション中も報告義務が頭にあって自分の意見を伸び伸びと述べるよりも他の参加者の発言のメモの方に気が行ってしまいがちですね。
今回は、Voltage Control代表のダグラス・ファーガソン氏や、MeetingMakersのローレン・グリーン氏をはじめとする実践者たちの知恵を交えながら、「報告が楽しく、価値ある時間になるための工夫」を3つにまとめてご紹介します。
🔑 共有タイムの“義務感”を“貢献の喜び”に変える3つの鍵
1.「全体にとって価値あることは何か?」をフィードバックの軸にする
Voltage Controlのダグラス・ファーガソン氏が提唱する3ステップは、シンプルで効果的です:
1. 「この場の全員にとって、価値があるのは何か?」をまず考える
2. 伝え方の枠を設ける(例:「3つの気づき」「意外だったこと」「グループとしてのコミットメント」など)
3. 視覚的な提示(スライド・ホワイトボード等)と進行役のサポートで軌道修正を行う
この3つを組み合わせることで、報告をブレイクアウトセッションの内容の忠実な「再現」ではなく、ファシリテーターに事前に与えられた「要点の共有」にフォーカスした発表になります。
2. 発表の形式自体を見直す:口頭以外にも選択肢がある
MeetingMakersのローレン・グリーン氏はこう問いかけました:
「面倒な全体フィードバックの時間、あなたも経験ありますよね?」
その上で、以下のような代替手段を提案しています:
- 🧑🏫 ファシリテーターが最初に例を示して、期待値を明確にする
- 🖼️ 各グループが要点を模造紙やボードにまとめ、全員で回覧(ポスターツアー)
- 📱 グループの代表を決めず電子投票ツールを活用し、全員が同時に回答・可視化
これにより、発表のプレッシャーが下がり、内容がより明確になります。
3. フィードバックのルールそのものを変える
他のファシリテーターからは、こんな提案もありました:
「すべてのグループが全体に報告する必要はないのでは?」
どうしても全体での把握が必要な場合は、テンプレートと評価項目を用いて、全グループの記録を後から共有できる設計にします。
この方法なら、発表数は絞られ、情報の質も高く、聞き手の集中力も保たれます。
💡 なぜこのテーマを選んだのか?
私は元教師として、そして現在ファシリテーターとして、何度もこうした場面に立ち会ってきました。特に日本では、「順番に一人ずつ/各グループずつ発表」という形式が一般的で、発表前の人は緊張し、発表後の人は気が抜け、誰もが“今ここ”にいない時間になってしまうことがよくあります。
それが“普通”になっている現場も多いですが、本来はチームのエネルギーを集約・拡張する大切な時間であるはずです。
今回ご紹介した3つの工夫が、読者の皆さまにとって「報告の時間」をデザインし直すきっかけになれば嬉しいです。
今回ご紹介した内容や、ファシリテーションに関するご相談・ご質問がありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください!
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日賑グローバル株式会社
ファシリテーター
ヒューステッス・ブレット
huestis@nisshin-global.com