1. アメリカで増大する長期失業者
6か月以上の失業状態に陥っているアメリカ人が増えている様子をワシントンポストが特集した。
アメリカの失業者の4人に1人以上が少なくとも半年以上失業している状況にあるという。
この割合はパンデミック後で最も高く、通常は恐慌など経済的混乱の時期にしか見られない水準である。
数でいうと8月には190万人以上のアメリカ人が「長期失業」に陥っていた。
長期失業とは27週間(約6か月)以上職に就いていない状態を意味し、ここまで失業していると再就職が非常に難しくなるとされる。
2023年初めの100万人と比べるとほぼ倍増している。
経済学者によれば、半年の失業は求職活動の転換点を示すことが多い。
この時点で失業保険や退職金も尽きている可能性が高く、経済的に不安定になりやすい。
また、6か月以上失業している人は求職意欲を失い、労働市場から完全に離脱する傾向も強い。
(今週の米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げもこのデータを反映していると見られる)
過去2か月、予想を下回る雇用統計や大幅な改訂が相次ぎ、労働市場がさらに悪化するのではないかとの懸念が高まっている。
失業率は4.3%と長期的には低水準にあるが、多くの企業は新たな関税や経済政策の影響を見極めようと採用を凍結している。
さらに、解雇も増加しており、失業保険の新規申請件数は2021年10月以来の高水準に達している。
労働省のデータによると、失業者が新たな職を得るまでの平均期間は6か月と、パンデミック前より1か月長くなっている。
また、4年ぶりに失業者数が求人件数を上回った。
今週発表された別の調査では、アメリカ人の「再就職できる自信」が過去最低となった。
ニューヨーク連邦準備銀行の調査によれば、もし突然失業した場合、3か月以内に職を得られる可能性は45%未満とされ、2013年の調査開始以来最低の数値だ。
エントリーレベルの求人が少ない市場に参入せざるを得ない若年層や新卒者にとっては厳しい状況が続く。
失業者の中で「初めて労働市場に入った人」の割合は依然として高く、今夏には37年ぶりの高水準に達した。
2023年5月にWHOがコロナパンデミック終息宣言を行った前後からアメリカ労働市場では「Great Resignation」と呼ばれる退職や転職でそれまでの職場を離れる人が増えた一方、サービス業での営業再開で求人が急増し、労働市場が趙過熱気味となり、それが賃金と物価を押し上げる原動力となってきていた。
今般の報道からは、その労働市場の過熱が収まり、一気に冷え込む方向に進んでいる様子を示している。
2. ドローンがもたらす「戦争の霧」
従来、衛星やドローン、携帯電話、人工知能といったテクノロジーが、いわゆる「戦争の霧」と呼ばれる、個々の国の軍事行動の準備状況の不透明性を晴らすと考えてきた。
しかし実際には「戦争の霧」の中で、敵を欺くことに成功している国が散見されている様子をワシントンポストが報じた。
たとえば「スパイダーウェブ作戦」では、ウクライナ軍がトレーラーに隠した小型ドローンを用いて、数千マイル離れた基地でロシアの最重要航空機を12機破壊した。
数週間後には、イスラエルの「ライジングライオン作戦」がイランの指導部を不意打ちし、その軍事力と核能力の多くを壊滅させた。
これらの作戦は従来からある「欺瞞」と「陽動」の戦術を用いているが、現在はドローンやAIアルゴリズムを組み合わせて敵の対抗手段を回避している。
米軍内部ではこれらの作戦が称賛されている一方で、米国自身が同じ分野で後れを取り、モスクワやテヘランが経験した被害を被る危険性も浮き彫りになっている。
テクノロジーの進歩によって、このような大胆な襲撃は低コストで可能になっている。
ウクライナは1機あたり1,000ドル未満の安価なドローンを使って、数百万ドル規模の戦略爆撃機に損害を与えた。
ロシアはこうした爆撃機を製造で補う力を欠いており、長距離攻撃や核戦力の中核を数年にわたり失った。
同様に、イスラエルの小型で安価なドローンは数百万ドルの地対空ミサイルやレーダーを破壊し、その後に数十億ドル規模のイランの司令部施設や核施設を壊滅させる道を開いた。
一方、イラン核施設に対する米空軍の攻撃では、爆撃と飛行コストだけで約1億9600万ドルを要した。
さらに、爆弾を投下した7機の爆撃機はそれぞれ21億ドルとされ、これは米国の戦略爆撃機戦力のほぼ半数にあたる。
先週、ロシアのドローン19機がポーランド領空に侵入した。
報道によれば、それらは1機あたり1万ドル程度の「ゲルベラ型」で、しばしば囮として使われ、ウクライナの防空網を混乱させる役割を果たしている。
これに対処するため、NATOはオランダのF-35戦闘機2機、ポーランドのF-16戦闘機2機、ポーランドのSaab 340早期警戒機、イタリアのAWACS、さらにヘリコプター部隊を動員し、総額で5億ドル以上を費やした。
にもかかわらず撃墜できたのは19機中わずか4機であり、使用されたAMRAAMミサイルは1発あたり160万ドル以上にのぼった。
今回はロシアが安いドローンで成果を出すデモンストレーションを行ったと言える。
米国本土もまた、このような不意打ちに対して極めて脆弱なままであるといわれる。
より高度なドローン、先進的なAI、そして精巧な3Dプリンティングの登場は、戦場そのものとそこで繰り広げられる欺瞞の方法を根本的に変えようとしている。
そして米国の最大の競争相手である中国は、これらの技術に巨額の投資を行い、イランやロシアの事例から教訓を学びつつある。
欺瞞と言えばSNS等を通じた偽情報やサイバーアタックなどが思い出されますが、比較的安価なドローンにこれだけの欺瞞効果があるということが実証され始めた年として2025年は記憶されそうです。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l 蔡英文前台湾総統の訪日に反発する中国
台湾の前総統である蔡英文氏は昨年5月の退任後初めて日本を訪問している。
当然ではあるが、この訪問は中国本土からの強い反発を招いている。
蔡総統は、今回の訪問を私的な訪問としており、公式な日程は未定としており、日本国内大手マスコミでも大々的にこのニュースを取り上げていないが、中国本土の日台に対する警戒感はむき出しとなっている。
l 中国空母3番艦「福建」
日本政府・防衛省は9月11日、中国海軍の3隻目となる最新鋭空母である「福建」を海上自衛隊が初めて確認したと発表している。
2022年に進水してから試験航行を重ねており、今回、東シナ海を航行していたとされ、また試験航行であるから、当該空母には戦闘機は艦載されてはいなかった模様である。
中国側は本艦を2025年にも実戦配備するとしており、防衛省は監視と情報収集を行っているという。
(2) 韓国/北朝鮮
l 住宅供給拡大を図る韓国政府
韓国政府は、不動産関係閣僚会議を開催し、住宅供給拡大策を発表している。
ソウル首都圏の住宅供給不足を解消する為、2030年までに毎年首都圏に新規住宅27万戸を着工、計135万戸を供給する計画となっている。
韓国土地住宅公社(LH)が造成した住宅用地を民間に売却せず、直接住宅供給を行う方法で供給速度を高める他、都心の老朽施設や遊休地などを最大限活用する方針となっている。
また、不動産投機を防ぐため、規制地域の不動産価格に対する借入金の割合(LTV)を強化し、土地取引許可区域の指定権を拡大するなど、需要管理も行うとし、危惧される不動産投機を金融面から抑制したいとしている。
キム・ユンドク国土交通部長官は不動産関係閣僚会議で、「国民が必要とする場所にマイホームを持てる機会を拡大し、国民が求める場所に良質の住宅を十分に供給することに全力を尽くす」と述べている。
l 脱原発と親原発の中で揺れる韓国原発産業政策
産業通商資源部の原発産業政策機能が環境部に移り、「脱原発政策推進の為の第二ステージ」に移行しようとしている中、韓国政府は原発新規建設及び産業振興を議論する大臣級国際行事の議長国として参加すると言う笑えない事態が起きているとの見方が韓国国内ではある。
即ち、産業通商資源部は、9月18日からパリで開催される第3次原子力長官会議をOECD(経済協力開発機構)原子力庁(Nuclear Energy Agency・NEA)と共に主管することとなっており、キム・ジョングァン産業部長官とマグウッドNEA事務総長が共同議長を務めることになっているからである。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,392.70(前週対比-6.52)
台湾:1米ドル/30.29ニュー台湾ドル(前週対比+0.19)
日本:1米ドル/147.62(前週対比-0.25)
中国本土:1米ドル/7.1242人民元(前週対比+0.0083)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):3,395.54(前週対比+190.42)
台湾(台北加権指数):25,474.64(前週対比+2,019.94)
日本(日経平均指数):44,768.12(前週対比+1,749.37)
中国本土(上海B):3,870.598(前週対比+58.084)