1.イーロン・マスクに続き、税制・エネルギー法案に反対を示し始めたテック企業
上院で先週土曜日に主要な手続きを終えた税制法案には、太陽光・風力・蓄電などのグリーンエネルギーへの支援を削減する内容が含まれている。
この法案には、中国など海外の企業からの素材を含む風力・太陽光発電所に対する新たな課税措置も盛り込まれており、サプライチェーン全体で中国製の素材を多く使用している再生可能エネルギー業界にとっては大打撃となり得る。
この法案は上下両院で可決される必要があるが、石炭採掘と石油採掘を支持し、連邦政府のグリーンエネルギー支出を非難してきたトランプ大統領の主要な選挙公約を実現しようとするものである。
テスラ創業者イーロン・マスク氏は土曜日、X(旧Twitter)に「上院の最新草案は、アメリカの数百万の雇用を破壊し、国家に甚大な戦略的損害をもたらす!」と投稿し、トランプ共和党と真っ向から対立する姿勢を示している。
この新税制法案が可決されると、屋上ソーラー、電気自動車、ヒートポンプ、その他の省エネ技術に対する消費者補助金も廃止される。
従い、住宅所有者は、電気自動車については数ヶ月以内に、ヒートポンプや屋上ソーラーについては年末までに補助金のクレジットを利用しなければならない。
また、オクラホマ州タルサに建設予定だったNorSunの6億2千万ドルの工場では、太陽電池ウエハーやインゴットの製造に数百人が雇用され、米国の製造業再活性化が期待されていたが、この法案のお陰でいまだに着工されておらず、プロジェクトは無期限停止となっている。
皮肉なことに、この税制法案の最大の影響は、サウスカロライナ州やジョージア州などの「(共和党が強い)赤い州」に現れると見られている。
影響を受けるのは太陽光業界だけではなく、バッテリーメーカー、風力タービンの組立業者、EV部品メーカー、さらに半導体、鉱物、工業用ガラスといった先端エネルギー技術を支える業界全体が打撃を受ける。
非営利団体E2によれば、エネルギー政策の不確実性とトランプ政権による数十億ドル規模の融資保証・補助金の凍結により、多くの再生エネルギー関連企業が米国内製造の計画を放棄しつつあり、撤退が始まっているという。
調査機関「ローディウム・グループ」と「エナジー・イノベーション」の分析モデルでは、クリーンエネルギーの後退は米国経済に大きな悪影響を及ぼすと予想、電力価格の上昇、再生可能エネルギーのコスト増、さらには2030年までに最大83万人分の雇用喪失を招くと予測されている。
トランプが、「24時間365日化石燃料による電力供給が必要」と語るAIデータセンターの保有企業でさえ、クリーンエネルギー補助金の削減は誤った政策だと警告している。
テック企業が主導する「クリーンエネルギー購入者協会(CEBA)」は、「風力・太陽光は即応性が高く、AI競争に勝つために不可欠な電源である」と強調する。
CEBAのテサノビッチ氏は「私たちは他企業とは競争できても、中国政府が補助する製品とは競争できない」と述べ、この政策変更により、米国企業は中国政府の補助を受けた製品との直接競争を強いられると指摘した。
再選に苦戦するノースカロライナ州の共和党上院議員トム・ティリス氏はこうしたテック企業のロビイストからの圧力を受け、土曜日にこの法案への反対を表明した。
ノースカロライナ州はこれまでにクリーンエネルギー補助金の最大の受益州の1つであり、エナジー・イノベーションによれば、68施設への投資額は約160億ドルにのぼり、さらに70億ドル以上の追加投資も発表されていた。
AIを始めとしたテック企業がエネルギーを爆食していくことは気になりますが、彼らがビジネスニーズとしてクリーンエネルギーを必要としているところは同エネルギー導入の弾みになると期待されますね。
2. 最高裁の判断を追い風に大統領令の早期実現を目指すトランプ政権
連邦最高裁は先週金曜日、連邦地裁による大統領令執行の差止命令は、訴訟の当事者(個人、団体、州など)に限定すべきだとの判断を下した。
これまでのように、訴訟に直接関与していない第三者にも効力を及ぼす命令を出すことはできなくなる。
連邦地裁判事たちはこれまでに約50件の差止命令を出し、対外援助削減、大規模解雇、試用期間中の職員解雇、移民の法的代理終了、出生地主義の禁止など、トランプ大統領の大統領令の実施を一時的に停止してきた(但し、これらの命令の一部は、上級裁で差し止めが解除されている)。
トランプ氏の大統領令に関する訴訟の原告側や法学者たちは、今回の最高裁判決が、トランプ大統領任期2期目の「行政権限をめぐる法的闘争」の構図を大きく再定義する可能性があると認めた。
ノートルダム大学ロースクールのサミュエル・ブレイ教授(全国的差止命令の研究者)は声明で、「オバマ政権以降、主要な大統領令のほぼすべてが、連邦地裁による『全国的差止命令』によって凍結されてきた」が、「最高裁は(今回の判決で)、連邦裁判所と行政機関の関係性を根本的にリセットした」と述べた。
金曜日、ホワイトハウスではこの判決が司法への勝利だとして誇らしげに発表された。
政権高官たちは、自分たちに不利な判決を下す裁判官を「活動家」や「妨害者」と呼び、頻繁に批判している。
トランプ氏は記者会見で「この最高裁の判断により、全国規模で誤って差し止められていた多数の政策を、速やかに進めるための申立てが可能となった」と語り、自身が任命に貢献した保守派判事たちの名前を挙げて謝意を示した。
政権にとっての差し止め解除を求める優先政策には、教育省および米国Dogeサービスに関連する差止命令、さらに米国国際開発庁(USAID)の解体を停止させている命令が含まれており、かかる差し止め解除はトランプ大統領が金曜日に発表した政策計画の実施に向けた取り組みの一環であると、同高官は述べた。
トランプは2期目の冒頭から、政府機関の解体や出生地主義市民権の撤廃など、さまざまな大統領令を矢継ぎ早に発令しており、それらに対抗する訴訟は300件を超えている。
ある専門家は、今回の最高裁の判断を受け、「もはや他者による訴訟に依存して自らの利益を主張することができないと気づいた都市や郡、州(の多くの団体)から、集団訴訟がますます増加するだろう」と予測している。
実際、出生地主義に関する訴訟の一部原告団は金曜日、すでにその手法を開始した。
集団訴訟は、同様の被害を受けた個人・団体を代表して訴える手続きである。
短期的には、トランプに対抗して法廷に持ち込んだリベラル派にとっての後退となるが、将来的には、保守派が次の民主党政権に対抗するために求める広範な差し止め命令を制限する結果にもなり得る。
すでに数多くの訴訟が持ち込まれ、今後さらに多くの集団訴訟が始まると、法曹関係者のニーズはたかまり、それこそ生成AIの早期導入が求められますね。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l パリのエアショーでのプレゼンスを高める中国
中国は、先月パリで開催された航空ショーに於いて、国産戦闘機を公開している。
この航空ショーには、中国をはじめ、47の国と地域から企業や団体が参加している。
今年は中国本土から合計76の団体が参加しており、これは2023年に開催された前回の2倍以上の数となっている。
中国の防衛産業の発展は顕在化してきている。
l 三菱ふそうトラック・バスに電気バスを供給する鴻海
台湾の鴻海は、自動車産業分野への更なるコミットメントを深めるべく動いている。
インドでは、電気自動車分野への参入も模索されている。
こうした中、鴻海は、ダイムラーグループ傘下にある日本の三菱ふそうトラック・バスに電気バスを供給する契約締結に向けて最終段階に来ているとの観測も流れている。
(2) 韓国/北朝鮮
l 就任から2週間で59.3%支持率を得ているイ・ジェミョン大統領
韓国世論調査会社であるリアルメーターが6月23日に発表した調査結果によると、就任から2週間が経つイ・ジェミョン大統領の支持率は59.3%、不支持率は33.5%となったと報告されている。
調査は6月16~20日、全国の18歳以上の2,514人を対象に実施されたものである。
支持率は前回調査(9~13日)に比べて0.7ポイント上昇し、不支持率は0.7ポイント下落している。
一方、19~20日に全国の18歳以上の1,008人を対象に行った政党支持率調査では、革新系与党「共に民主党」が前回調査より1.5ポイント下がった48.4%、保守系最大野党「国民の力」が1.0ポイント上がった31.4%となった。
「改革新党」は4.9%、「祖国革新党」は2.9%、「進歩党」は1.6%となった。
こうした中、イ・ジェミョン大統領は23日、外相候補にチョ・ヒョン前国連大使、統一相候補にチョン・ドンヨン元統一相、国防相候補にアン・ギュベク国会議員を指名するなど、主要閣僚の人事を決めている。
大統領府によると、アン氏は64年ぶりの軍出身者でない国防相である。
l トランプ関税の影響を受ける韓国の対米鉄鋼輸出
韓国の鉄鋼の対米輸出額は5月には減少している。
輸出単価も下落した。
韓国貿易協会によると、5月の韓国の対米鉄鋼輸出額は前年同月対比16.3%減の3億2,700万米ドルとなり、輸出単価は昨年5月の1トン当たり1,429米ドルから1,295米ドルへと9.4%下落している。
米国のトランプ政権が3月12日、米国に輸入される鉄鋼・アルミニウム製品に25%の関税を課した影響が本格化し、韓国内の鉄鋼メーカーが関税の負担を相殺する為にマージンを減らして輸出を続けた結果と分析されている。
業界は、今月4日から関税率が50%に引き上げられた点も踏まえると、下半期の対米鉄鋼輸出は更に減少するのではないかと見られている。
更に、日本の日本製鉄が米鉄鋼大手のUSスチールを買収した効果が来年以降本格的に表れれば、米国市場における韓国産鉄鋼の立ち位置は更に狭まる恐れがあり、韓国鉄鋼業界は米国市場に対する輸出戦略を全面的に再検討する必要があるとの指摘も出ている。
l 増加に転じた韓国の出生数
韓国政府・統計庁が発表した「人口動向」によると、4月の韓国の出生数は前年同月対比1,658人(8.7%)増の2万717人となり、2022年4月(2万1,164人)以来3年ぶりに2万人台を回復している。
出生数の増加率も、4月としては1991年(8.7%)以来34年ぶりの高水準となっている。
本年1~4月の累計出生数は8万5,739人で、前年同期対比7.7%増加している。
出生数は昨年7月から10カ月連続で増加が続いている。
1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率も、4月は前年同月対比0.06ポイント上昇した0.79となっている。
l 2000万人を超えると予想される訪韓旅行者数
韓国の民間シンクタンクである現代経済研究院が公表した報告書で、今年の訪韓外国人観光客が2,000万人を超えるとの見通しを示している。
主要国の1人当たり実質国内総生産(GDP)、実質実効為替レート、外国人観光客1人当たりの平均支出などを活用し分析した結果、今年の外国人観光客数は過去最多規模の2,009万人にまで増えると予想している。
これに伴う今年の観光収入は約202億5,000万米ドルと予想されている。
これは昨年の名目国内消費1,167兆8,000億ウォンの2.5%の水準となる。
同研究院は、「外国人観光客の流入拡大と観光収入の増加で国内消費が2.5%増加することを意味する。
直接・間接的な波及効果まで考慮すると全般的な内需拡大にかなり寄与すると期待される」との見方を示している。
国内消費が振るわない状況の中、外国人観光客の支出増加は国内消費に少なからず影響を与えると分析している。
また、人観光客の流入、観光収入の拡大を通じて消費回復の基盤を拡充し、内需景気全般の改善を図るべきである。」と強調している。
l 日本との経済連合等の経済活性化案を発表した大韓商工会議所
韓国の大韓商工会議所は、韓国と日本の経済連合、海外人材の500万人誘致など新たな成長モデルを盛り込んだ冊子である、「新しい秩序、新しい成長」
を韓国政府、国会、大統領室に伝達すると共に、国民が政策提案を行える国政企画委員会の「国民疎通プラットフォーム」にも同内容を提案したと発表している。
大韓商工会議所の会長を務めるSKグループのチェ・テウォン会長が行った国会での講演や政府懇談会、メディアとのインタビューなどで述べた内容を各分野の専門家が研究し、提言集の形でまとめた冊子は、三つの新たな成長モデルとして、6兆米ドル規模の日韓経済連合を実施する、500万人の海外人材を誘致する、「ソフトマネー」への稼ぎ方の転換を推進するなどを提示している。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,360.82(前週対比+10.07)
台湾:1米ドル/29.11ニュー台湾ドル(前週対比+0.42)
日本:1米ドル/ 144.71(前週対比+1.11)
中国本土:1米ドル/7.1705人民元(前週対比+0.0105)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):3,055.94(前週対比+34.10)
台湾(台北加権指数):22,580.08(前週対比+534.34)
日本(日経平均指数):40,150.79(前週対比+1,747.56)
中国本土(上海B):3,424.227(前週対比+64.332)