ニュースレター国内版 2021年・冬(255号)

1. 議会に大統領選挙結果の認証を求めるビジネスリーダーたち
2. 銃を携帯して議会に登院することを宣言する共和党下院議員
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 
4. 中東フリーランサー報告3

 

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1.議会に大統領選挙結果の認証を求めるビジネスリーダーたち
米国の約200人ものトップビジネスリーダーたちは1月4日、議会に対し、「大統領選の結果とその後のプロセスを妨害したり遅延させたりする行為は我々の民主主義の本質的な教義に反する」として、バイデン氏を次期大統領とする選挙結果を議会として認定するよう促す書状に署名の上、提出したとワシントンポストが伝えた。
幹部が署名した企業にはゴールドマンサックス、マイクロソフト、ファイザー、マスターカード、ブラックストーングループ、ブラックロック、リフト、デロイト、ムーディーズ、アーネストヤング、ウィワーク、ジェットブルー、メットライフ、カーライルグループ、アメリカンエキスプレス、サックスフィフスアベニュー、プライスウォーターハウスクーパー、ドイチェバンクほかが含まれ、全米バスケットボール協会(NBA)といった組織も含まれている。 
元々ビジネス界は政争に巻き込まれることを避けていたが、「ニューヨーク市のためのパートナーシップ」というニューヨーク市内のビジネスリーダーの団体の長であるKathryn Wylde女史が、このままではコロナ対応や経済対策で重大な問題を引き起こしかねないとの危機感から今回の議会宛書状の作成と署名とりまとめに動き出したもの。 
参加企業はほとんどがFortune 500にリストされており、上記の企業分野以外でも銀行、エアライン、法律事務所、メディアなど様々な大企業の幹部が署名している。 
ビジネス界とトランプ大統領は当初蜜月関係にあり、ビジネスリーダーたちはトランプの娘のイヴァンカと彼女の夫クシュナーが手配したサミット会議に参加してトランプ共和党による減税法案提出の支援を行っていた。 
また、ビジネス界は大統領経済補佐官としてゴールドマンサックスのトップであったゲリー・コーンをトランプが引き抜いたことも高く評価していた。 
その蜜月の関係も、2017年8月のシャーロットビルでの白人至上主義者等の抗議デモと、それに反対する集団のぶつかり合いの事件において、前者が後者に危害を加えたことに対し、トランプ大統領がそれを非難せず、喧嘩両成敗的発言をしたことに抗議する形でビジネス界のトップたちは、トランプ主催のビジネス協議会などから去っていった。
また、最終的にトランプ税制が、収税や地方税で税控除の上限を設けたことに対し、ビジネス界は多大な不満を持つことになった。 
米国の大企業の幹部は優秀な社員をキープし続けるためには、彼らが関心を持つ社会的な問題に対し、公に積極的に発言していくことが求められるようだが、今やこ
の大統領選挙問題に対しても旗色鮮明にする必要があるということであろうか。
2.銃を携帯して議会に登院することを宣言する共和党下院議員
前記のニュースで触れた議会によるバイデン氏の大統領選勝利の認定に反対するトランプ支持グループが今週ワシントンDCに集まり抗議活動を行うことに対し、ワシントンDC地区警察は「自宅に銃を置いてから抗議活動をするように」と警告している。 
この抗議活動が暴力沙汰を起こす可能性が高いことから、地区警察は300もの州兵や議会衛視、公園警備官及びシークレットサービスのメンバーの支援を受けることになっている(米国時間の6日、バイデン勝利の認定が議会にてなされたが、議会敷地内に抗議集団が押し入り銃の発砲など暴動騒ぎとなり4名が無くなっている)。
ワシントンDC地区の銃法は、他州での銃の隠し持ちのライセンスを認めず、非居住者が銃を所持する場合は、地区警察に届け出なければならない。
また、1967年にできた法律では議会の敷地内での銃の携帯を禁止しているが、現職議員は例外となっている。 
この法律は、当時の議会の警備が手薄で、極左過激黒人団体のブラックパンサー党員が襲撃してくることを恐れた白人議員を中心に制定され、リンドン・ジョンソン大統領の署名で法制化されている。 
但し、議員であっても議場内での銃の持ち込みは禁じられている。 
以上のような背景や状況の中、今回の議会選挙で初当選したコロラド州選出の共和党下院議員ローレン・ボエバート女史は、1月3日の初登頂と同時にデジタル広告を通じ、ワシントンDC地区内はもとより、議会敷地内でも銃を携行すると宣言し、銃携帯の権利を主張している。 
彼女はコロラドにある銃をテーマとしたレストランのオーナーで、地元では常に銃が見えるように携帯している。
これが単なる彼女の売名行為というよりは、複数の民主党の議員が、議員による議会敷地内での銃携帯の例外規定の排除を主張していることに対し、新人のボエバート議員が、国民の銃の所持を認める憲法修正第2条を擁護する共和党の政治的主張の体裁を取ってはいる。
とはいえ、銃携帯の目的として、「議会内の事務所まで毎朝DC地区内を徒歩で通勤しています。伸長150cm、体重45kgの私は、自分の身を自分で合法的に守ることを選択しました。というのも自分が自分の安全を最も必要としているからです」とデジタル広告の中で語っている。 
今のところこの問題が党派間で大きな問題になることはないものの、改めてこの機会に考えてみて、仮に議員による議会敷地内での銃携帯を禁じた場合、敷地内直前まで携帯してきた銃を誰にどのように保管してもらうのか、そして仮に今まで通り議会敷地内での議員による銃携帯が許される場合、議場内に入る前に銃をどこで身から放し、どこで保管するのかという現実的な問題が見えてきているようである。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1)  中国
*  中国国産空母「山東」台湾海峡通過
中国海軍の報道官は、中国初の国産空母である「山東」が台湾海峡を通過し、南シナ海の海域で訓練を実施したと発表している。
山東は2019年末に、中国南部の海南島・三亜の海軍基地で就役したが、その後は建造所がある遼寧省大連に留まっていた。
中国海軍は一連の海上試験訓練が完了したとし、実戦配備に向け訓練レベルを引き上げているものと見られている。
また、新たな空母建造の可能性もあるとの見方も出てきている。
こうした一方、英国のシンクタンクは、中国が米国を追い抜いて、これまでの推定よりも5年早く、2028年に世界最大のGDP規模の経済大国になるとの見
方を示している。 
*  台湾の一人当りGDP3万米ドル超えの見通し
台湾政府・国家開発委員会は、台湾の2021年の経済成長率の目標はこの9年で最高値となる3.8%へ4.2%であり、一人当たりのGDPは30,038米ドルから30,145米ドルとなり、初めて3万米ドルを超えるとの見通しを発表している。
来年の一般的な経済環境については、国家開発評議会は、外需の面では、国際経済の回復によって、半導体、情報通信などが好調となり、継続的な、力強い輸出に繋がる、よって商品輸出はプラス成長となるとの予想を示している。
また、民間消費は、新型コロナウイルスの感染拡大沈静化、消費者心理の回復などにより、2020年のマイナス成長から4.04%のプラス成長に転ずると予想している。
台湾への民間投資は多様化し、台湾経済の全体的な発展、向上に役立つものと期待されている。
尚、失業率は3.6~3.8%と予想されている。
*  最高速度350kmの中国高速貨物鉄道開発
中国は、「いざとなったらば鎖国できる国造り」を進めており、そうした視点からも、国内の交通、物流網の充実を図っている。
そして、人を大量な早く運ぶ交通手段としての、「高速鉄道事業」に注力してきていることはご高尚の通りであるが、ものを大量に早く運ぶ交通手段としての高速貨物鉄道事業にも注力している。
こうした中、中国の鉄道車両メーカーである中国中車は、「最高時速350キロの貨物列車を開発」その車両を公開している。
世界最速の貨物専用列車であるとされ、1,500キロの距離を最短5時間で貨物輸送できる能力があると見られている。
(2) 韓国/北朝鮮
*  韓国海軍軽空母建造の可能性
韓国海軍の軽空母(多目的大型輸送艦-II)建造事業が推進される見通しとなっている。
韓国軍合同参謀本部は、合同参謀会議で、軽空母が安全保障の脅威に対応する将来的な戦力と評価し、建造事業の必要性を認め、これにより、2021年中に同事業が国防中期計画に反映されれば、事業予算が策定されるなど本格的に推進されることとなる。
南北融和が推進されている中、北朝鮮の空軍力と韓国の海軍力を合わせた国防力強化の方向性も模索されているとの見方もある。
*  宇宙ロケット打ち上げ遅延
韓国産の宇宙ロケットとなる「ヌリ号」の打ち上げ日程が再び7~8カ月ほど延期されることになったと伝えられている。
2011年に開発計画が確定して以降、日程が変更されるのはこれが3度目であり、なかなか打ち上げがならない。
制宙権争いに早く参加したい韓国にとっては痛手である。
*  米国市場で好調な現代自動車
韓国有数企業グループである現代・起亜自動車の2020年1〜11月の米国市場シェアが8.6%となり、2012年の8.7%以降では最高水準を記録したと、米国のウォール・ストリート・ジャーナルが報道している。
前年同期対比では0.8%ポイント増加しており、これは、米国市場での完成車メーカーの中で最大の増加幅ともなっている。
[主要経済指標]
1.    為替市場動向
韓国:1米ドル/1,084.66(前週対比+14.57)
台湾:1米ドル/28.07ニュー台湾ドル(前週対比+0.05)
日本:1米ドル/103.07円(前週対比+0.41)
中国本土:1米ドル/6.5399人民元(前週対比+0.0009)
2.      株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,873.47(前週対比+66.61)
台湾(台北加権指数):14,732.53(前週対比+401.11)
日本(日経平均指数):27,444.17(前週対比+787.56)
中国本土(上海B):3,473.069(前週対比+76.506)
4.中東フリーランサー報告3
元三井物産戦略研究所シニアフェローの大橋さんから掲題の中東レポートを昨年末に頂戴しましたので添付の通り皆様に共有させていただきます。 
大橋さんからは以下のメッセージを頂いております。
「愈々激動の2020年も大晦日となりました。今年は個人的にも節目の年となりましたが、なにはともあれ、来年は明るい話題に包まれたいと願います。
滑り込みとなりましたが、「中東フリーランサー報告3」をお送りいたします。
これをご覧になる頃は、もう明けましておめでとうございますかも知れませんが、どうか良いお正月をお迎えください。
来年も「中東フリーランサー報告シリーズ」のご愛読をお願い致します。」
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