ニュースレター国内版 2022年・夏(296号)


日賑グローバル・ニュースレター国内版(第296号)
1. 8月に息を吹き返したバイデン大統領と民主党
2. 中間選挙本選でトランプとの距離感を気にする共和党候補者
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 
4. 中東フリーランサー報告14

 

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1.8月に息を吹き返したバイデン大統領と民主党
ほんの少し前の7月まではインフレへの不満と経済・環境法案の議会での停滞などで、バイデン大統領と議会民主党の人気は落ち込んでいた。また、バイデン大統領は中絶を違憲とした最高裁判決や銃保持者による大量殺人事件を非難はするもののカリフォルニア州のニューサム知事やイリノイ州のプリツカー知事のような怒りの感情を表に出して弁を振るう姿勢に対して冷静過ぎると見られていた。 
その結果、最近まで中間選挙どころか2024年の次期大統領選では民主党として新たな候補を選ぶべきとの声が密かに交わされていたという。当ニュースレターでもバイデン大統領が中間選挙に向け応援演説にくることを遠慮しようとする民主党議員の様子を紹介した。 それが8月に入ってCHIPS ActやInflation Reduction Act、といった経済、環境、経済安保分野の大型法案を成立させ、退役軍人の健康被害を救済する法律も通し、さらには学資ローンの返済で苦しむ学生に対し2万ドルの元本を免除する大統領令を出すという目覚ましい成果を上げたことで党内でのバイデンに対する不満や不安の声が収まっている様子をワシントンポストが伝えた。加えてガソリン価格も下がっていることから先週Quinnipacが行った世論調査でも民主党支持者の47%がバイデンの再選を支持、43%の不支持を上回っ
た。7月には支持が40%、不支持が54%もあった。 
同様に、先週行われたウォールストリートジャーナルの調査では「バイデンとトランプで仮に選挙を行ったらどちらを支持するかという」問いに対し、バイデンが50%、トランプが44%となった。今年3月に行った同じ問いでは両者45%で同率であった。上述のカリフォルニア州のニューサム知事もバイデン大統領を称えるメッセージを出し、前回の民主党大統領予備選で戦ったエリザベス・ワレン上院議員(マサチューセッツ州選出)やバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)もバイデンの再選を支持する意向を表明している。
共和党の中間選挙戦略がバイデン攻撃に絞ったものが中心となっていたが、バイデンがトランプの名を前面に出した共和党対抗戦略を打ち出し、彼の支持率が戻りつつあることで共和党側の中間選挙戦略が見直しを迫られている。中間選挙を突き抜けて2024年の大統領選の話題となっているのは随分と気が早い気がするが、中間選挙の各党戦略がバイデンvs.トランプの構図になる中で各候補者が大統領と元大統領との距離を設け、独自色を出す必要に迫られていることは間違いない。2024年の大統領選では82歳になるバイデン大統領と78歳になるトランプ前大統領が仮に前回と同じバトルを繰り返すことになるとは俄かには信じがたいが、それが民意であるとなれば、アメリカ版人生100年時代の象徴なのか、はたまた層の厚い高齢有権者と投票率の低い若年有権者の人口動態の象徴なのであろうか。
2.中間選挙本選でトランプとの距離感を気にする共和党候補者
共和党の中間選挙出馬候補者の多くはトランプ前大統領からの支持の取り付けや応援演説、そして彼と一緒に映る記念写真や動画などを駆使して党内の予備選での勝利を手にしてきている。これから11月の本選までの2か月間は民主党候補者との間でキャンペーンバトルが繰り広げられるわけだが、共和党候補者はこの時点からはトランプ色を自分の背
景から消そうとしている様子をワシントンポストが伝えている。
例えばキャンペーン用のウェブサイトのトップページに映っていたトランプ前大統領の写真や、「民主党がトランプ大統領を魔女狩りで排除した」とか「選挙の不正」といった表現を取り除く候補者が何名か紹介されている。 この背景には無党派層に対する配慮がある。クィニパック大学の全国世論調査によると共和党支持層はその72%がトランプの2024年大統領選出馬を支持しているが、66%の無党派層はそれを望んでいない。民主党陣営は無党派層のこの反トランプの機運に乗じて攻勢に打って出ている。 
トランプが動くことで共和党支持者が投票所に向かい、トランプが2020年の選挙が不正であったと相変わらず主張し、議会乱入事件における彼の関与や彼が機密書類をフロリダの別荘に持ち出したことの嫌疑がかかるほど逆にトランプへの献金が増えるという構図の中で、無党派層が嫌気をさすのか、それとも無党派層の中でも前回は民主党に投票した白人労働者層をインフレの不満等を追い風にトランプの力で共和党に呼び戻せるのか各党の選対本部が慎重に分析している。バイデンは中間選挙をトランプが共和党に植え付けた過激主義に対する国民投票と位置付け、過激なことに敏感な無党派層を取り込もうとしている。元々共和党が強い選挙区は別として、接戦が予想される下院の選挙区の中でトランプが支持した15人の候補の地区ではトランプの過激なメッセージのお陰で逆に民主党の勝利の可能性が増したと見られている。
尚、この15人の中には2008年の大統領選で共和党副大統領候補となったアラスカ州の元知事のサラ・ペイリンも入っている。上院についてはトランプが前回の大統領選で落としたネバダ、アリゾナ、ペンシルバニアが改選州に含まれることも民主党側には多数党維持を期待できる要因となっている。トランプが接戦州で応援に来る場合には2020年の選挙不正の主張や機密書類持ち出しの話は一切せず、移民やインフレ、犯罪の問題だけに集中して欲しいと言うのが共和党候補者の本音のようである。ただトランプの首に鈴はかけられず、聴衆の多くを占めるトランプ支持層はそうした過激なメッセージを好むのであろう。
前回2020年に、トランプは今の時期から投票日までの間に共和党候補者の応援を50か所でのオンライン演説会を含め精力的にこなしており、今回も同様の動きをすると予想されている。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1)  中国
*  コロナ感染による四川省成都の封鎖
四川省の大都市である成都は、新型コロナウイルスの蔓延を受けて封鎖を発表した。中国の大都市がこのような封鎖措置を行うのは、久しぶりのこととなる。四川省・成都市当局者は、8月25日から31日までの間に700件以上の新型コロナウイルス感染事例を数えたと報告している。
*  地方金融機関の不正の可能性
中国本土では今年、農村地域の一部で預金が引き出せなくなったとして人民の不安が高まる事態が発生した。預金が引き出せなくなったのは、農村向けの小規模な金融機関である禹州新民生村鎮銀行など4行の所謂、地域金融機関である。預金対象者は数十万人、預金額は約400億人民元にのぼると報じられていた。許昌市・公安当局は、4行の共通の株主である投資会社が関与した詐欺行為があり、これが今回の問題の背景にあったと見て、捜査を進めていた。今回の発表によると、投資会社は違法に当該銀行を支配し、13~18%の高金利を掲げて預金者から資金を集めていた疑いがあるとして、不正腐敗に関連した調査が進められている。
*  中比関係について
フィリピンのマナロ外相は、「フィリピンは南シナ海の排他的経済水域での石油とガスの共同探査に関する中国との協議を再開する用意がある」とコメントしている。即ち、マナロ外相は議会公聴会で、フィリピン政府は、石油とガスを開発出来る時はいつでも交渉に入ることについて、中国に関心を示していると回答したとしている。マナロ外相は、エネルギー価格の高騰を背景にして、資源開発の必要性が最近高まっていることを背景にして、フィリピン政府は、今だけでなく長期的にも、石油とガスを必要としているともコメントしている。尚、フィリピンとの共同探査に関心を示しているのは中国政府と中国企業だけであるともコメントしている。
(2)  韓国/北朝鮮
*  ドル高の影響を受ける金融市場
韓国では9月2日のソウル外国為替市場で、通貨・ウォンが前日対比7.7ウォン安の1米ドル=1,362.6ウォンで取引を終え、終値としては2009年4月1日の1,379.5ウォン以来13年5カ月ぶりの安値水準となっている。8月29日には株式市場であるコスピも2%以上下落し、金融市場が大きく揺れている。その最大の背景は、米ドル高現象が長期化するという不安感が大きくなった為と見られている。米国のパウエル連邦準備制度議長がジャクソンホール会議に於いて前例ないほど、強硬な口調で、「インフレ・ファイター」になるという立場を明らかにしたことか
ら、グローバル金融市場が大きな衝撃を受けた。
そして、韓国経済の危険因子と見られてきている高物価・米ドル高・高金利の「三高」現象が更に顕在化、そして長引く可能性があるという懸念も高まり、韓国金融市場も弱含みとなっている。為替レートの米ドル上昇(ウォン値下落)により輸入物価が上がり、金利上昇で投資と消費が萎縮する場合、成長鈍化に繋がる可能性があるからである。
*  韓国企業の対米投資懸念
米国政府が韓国政府・韓国企業に対して、IPEFの関係でも要求しているサプライチェーンの再編に合わせて、対米投資を増やすように圧力を掛けているが、最近のウォンの対米ドル相場が1米ドル=1,350ウォン前後で推移していることで、これまでに大規模な対米投資を発表した韓国の主要企業グループは当初見通しよりもウォンに換算すると10兆ウォンも投資金額が増加する見通しとなり、対米投資に対する不安と不満が高まっている。
*  アップルの中国YMTCとの緊密化を注意する韓国半導体業界
米中覇権争いが続く中、中国の半導体産業に対する米国の牽制が激しくなっている。しかし、それでもその米国の主要企業の一つであるアップルは中国第1位のNANDフラッシュメーカーであるYMTCとのビジネス関係の緊密化を図る動きを示している。NANDは中韓の技術格差が1~2年程度に縮まっているとの評価が出ているメモリ半導体分野であり、中国に対する市場比率が高い韓国半導体業界にとっては、米中のこうした接近は予想外の動きとなる。
[主要経済指標]
1.    対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,357.67(前週対比-25.94)
台湾:1米ドル/30.57ニュー台湾ドル(前週対比-0.38)
日本:1米ドル/140.21円(前週対比-3.54)
中国本土:1米ドル/6.9010人民元(前週対比-0.0413)
2.      株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,409.41(前週対比-71.62)
台湾(台北加権指数):14,673.04(前週対比-605.40)
日本(日経平均指数):27,650.84(前週対比-990.54)
中国本土(上海B):3,186.478(前週対比-67.745)
4.中東フリーランサー報告14
三井物産戦略研究所におられた大橋誠さんから最新中東レポートを頂きましたので皆様に共有させていただきます。大橋さんからは下記メッセージを頂いております。前号以来2か月のご無沙汰となりましたが、中東フリーランサー報告14をお送りします。この2か月間も色々な出来事があり、夏枯れとは言えない感じでした。その全ての網羅整理は出来ませんが、目立った案件について、メディアとは違った視点で考察してみました。今回も皆様のご意見・ご批判を頂ければ幸甚です。