ニュースレター国内版 2022年・春(291号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第291号)

 

1. バイデンのBuild Back Better政策が失速する間、州単位で保守化が進むアメリカ

2. インフレ対策、気候変動対応そして北極海権益争いの間で揺れるバイデン政権

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

4. 中東フリーランサー報告13 

5.イスラエル大使館情報 フードテック&サイバーセキュリティ  

6.メディアの皆様向けプレスリリース(ジャパンボウル世界大

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1.バイデンのBuild Back Better政策が失速する間、州単位で保守化が進むアメリカ

 

バイデン大統領はフランクリン・D・ルーズベルト大統領のニューディールやジョンソン大統領のグレートソサエティをモデルとしてBuild Back BetterB3)政策を自らの政権の支柱として打ち立ていた。 気候変動対策、大学学費削減、薬剤費用削減、大企業法人税増税、チャイルドケア補助と子供を持つ両親の財政支援といったリベラルな政策をふんだんに盛り込んだ超大型プロジェクトである。民主党は現状、1992年及び2008年の選挙以来となるホワイトハウス、上院、下院の与党を独占するという状況にあり、そのB3の実現が期待されていた。

 

ところが、バイデン就任から14カ月が過ぎ、中間選挙を4か月後に控え、この一大プロジェクトはとん挫した状況にある。 オバマ政権(2009年~2016年)のこの時期はオバマケアを法制化、トランプ前政権(2017年~2020年)であればトランプ税制を実現、夫々の政権の中間選挙前の目玉の実績となっていた。バイデン政権でもコロナ対応の大型支出法案やインフラ整備法案を通したり、最近では21歳未満の銃の購入規制法案を通すといった実績もありはするが、やはり大本命がB3であることは本人が一番よくわかっている。 

 

ルーズベルトがニューディールを進める際に、議会民主党は上下両院で80%もの議席を握り、ジョンソン政権でも70%を占める与党であったものが、バイデン政権では上下両院ともほぼ50:50の拮抗した状況にあり、マンチン上院議員(ウェストバージニア州選出)のような反対者が党内から一人出るだけでとん挫の憂き目にあっている。バイデンがこの政策実現にもたつく間、保守共和党陣営は州単位での基盤を大いに強化し、全米50州中30もの州で州の上下両院の与党を押さえている。民主党で州の両院与党を得ているのはわずか17である。 

 

その結果、中絶を違法とする州法がテキサス州やフロリダ州を含め23もの州で成立し、その中でミシシッピー州の妊娠15週以降の中絶を禁止する州法を合憲とする判断が今月最高裁で下された。中絶が米最高裁で合憲とされてから約半世紀たっての逆転判断である。

同じく今月に、銃の屋外での携行を規制するニューヨーク州の州法を違憲とする判断も最高裁で下されている。州単位でのボトムアップの保守化の動きを、9人中6人の判事が共和党政権選出(保守)である最高裁が国の判断として吸い上げている格好にある。保守州ではLGBT並びに性転換の州法が出され、保守化の傾向が一段と強まっており、これは子供の性教育にも州間で大きな隔たりをもたらしつつある。バイデン大統領はLGBTの人々に新たな保護を提供する平等法(Equality Act)の法制化を公約として掲げたが、上院で失速している状況にある。「米国の分断」と良く耳にするが、州としてのパワーポリティクスの実情は右傾化と思われるほどに保守・共和党に有利な状況を呈しているようである。 

 

ただ、マイノリティや貧困層は投票率の低さ或いは投票権そのものを得られていないといった理由から往々にして州のポリティクスに反映されていない可能性がある。今回の中絶や銃規制に関する最高裁の判断に危機感や問題意識を高めた女性票はもとよりマイノリティ、貧困層を如何に投票所に駆り立てられるかが民主党の巻き返しのカギなのかもしれない。

 

2.インフレ対策、気候変動対応そして北極海権益争いの間で揺れるバイデン政権

 

アラスカ州ナイーキュースは北極海間近のツンドラ地帯に覆われた町で、単一区画としては最大の国有地がある。ここに石油会社コノコフィリップスが巨大油田を見つけ、1999年以来開発・生産が行われ、これまでに6億バレルもの原油を産出してきた。同社は、その後この地域で新たにWillow Projectと呼ぶ石油開発プロジェクトを立ち上げ、政府にその許可申請を行っている。トランプ政権時代の2020年にこのプロジェクトの埋蔵規模を586百万バレルとして開発を許可したが、連邦裁判所は環境負荷の分析が不十分として着工を差し止める判断を示している。

 

そこでバイデン政権は新たな環境評価を行い、方向性としてはこのプロジェクトを許可する見通しにある。ただ、この油田の埋蔵規模はトランプ政権の予想をはるかに超え、30億バレルもの規模にあるとコノコフィリップスは投資家向け説明会で語っており、環境保護団体はこれだけの石油が採掘されることに伴う環境への悪影響を懸念、開発中止を求めている。 バイデン政権にとって、気候変動対策や環境保護政策は重要政策であるが、それ以上に喫緊の課題がロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰への対応であり、その対策として国内の供給を増してインフレを抑制することの政治的意義は大きい。 

ただ、自然の秘境といわれる土地の地元民も開発のための港湾や道路、ビル建設がもたらす環境負荷の大きさを知るにつけ、懸念を表明するようになっている。このアラスカのツンドラ地帯の温暖化は米国全体の平均の3倍の速さで進んでいるという。 

 

その結果、永久凍土の溶解で住居が傾いたり、ツンドラ地帯に穴が開いたりしている。トランプ政権時のWillow Projectの産出見積もりは586百万バレルと過少であったが、仮にこれが正しいとしても、これを燃焼すれば260百万トンもの二酸化炭素排出となり、これは石炭火力発電所が66も束になって一年間石炭を燃やして排出する量と同じとなる。国有地から掘削される化石燃料はアメリカの温暖化ガス排出の4分の1近くを占めており、Willowプロジェクトが開始することは「炭素爆弾」となるとリベラルなシンクタンクは警鐘を鳴らすまたこれまでの採掘事業で地元での大気汚染問題やガス漏れ事件も起きており。単に地元経済を潤わせ、雇用ニーズを満たし、生活水準を高めるというよりも、アラスカにネイティブな人々の生活に資本主義を持ち込み環境はもとより伝統・文化までも破壊しつつあるとの見方もある。  

 

一方で、北極海は化石燃料や鉱物資源の最後で最大のフロンティアとして北極海沿岸8か国(米国、ロシア、カナダ、スウェーデン、フィンランド、ノルウェイ、デンマーク、アイスランド)はもとより中国などオブザーバーとしてその権益に熱いまなざしを送っており、新たな航路の確保や安全保障面からも注目されており、バイデン政権が国益のために北極海域周辺の開発をどう位置付けるのか注目される。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  米上院、台湾支援の超党派法案提出

米国上院の有力議員2人が、台湾への支援を大幅に拡大する法案を提出した。

今後4年間で45億米ドルの軍事支援を提供するほか、中国が台湾を侵略した場合に厳しい制裁を科すことなどが盛り込まれている。

更に、台湾を北大西洋条約機構(NATO)非加盟の主要な同盟地域に指定する案も含まれる。

当該法案を提出したのは上院外交委員会のメネンデス委員長(民主党)とグラム議員(共和党)であり、両氏が提案している「2022年台湾政策法」は、米国による台湾関与の基盤となっている「台湾関係法」が制定された1979年以降で、米台関係を最も包括的に再構築するものとされている。

 

l  中国3隻目の空母進水

中国は、同国3隻目の空母・「福建」を進水させたことで、近い将来、空母を常時運用できる態勢が整うことになると見られている。

福建は艦載機の発艦能力を高めるカタパルト推進装置を備えており、試験航海を経て本格的に就役すれば、洋上での航空機運用能力が大幅に向上すると見られている。

中国が進めてきた海軍の近代化を象徴する艦といえ、米国はもとより周辺諸国が警戒を強めるのは必至である。

尚、米国政府・国防総省による中国の軍事力に関する2021年版報告書は、3隻目の就役時期を、2024年までと予測、この通りに就役すれば、中国は米国以外でカタパルト式の空母を持つ唯一の国となると警戒されている。

 

l  グループ企業で半導体のサプライチェーンをカバーしようとするファーウェイ

中国の主要企業の一つであるファーウェイは昨年末、深セン市に半導体子会社である「ファーウェイ精密製造有限公司」を設立している。 

パッケージングとテストのような半導体後工程を専門とする会社である。 

ファーウェイの別の子会社である科学技術投資会社は最近3年間、中国半導体企業52社に投資したとも報告されている。 

投資した企業の相当数が半導体装置・素材・EDA(設計自動化)ソフトウェア企業である。 

こうした投資案件の中には中国最大の半導体ウェーハプローバー(検査装置)会社も含まれている。 

更に、半導体設計会社(ファブレス)であるハイシリコンを持っているファーウェイは、初の半導体製造工場(ファブ)も武漢市に設立している。

 

(2)  韓国/北朝鮮

l   

FRBは先般連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.75%引き上げた。

米国の政策金利(年1.5~1.75%)の上段(1.75%)と、韓国の政策金利(年1.75%)が同じになった。

こうしたことから、韓国銀行の追加利上げは確実視されている。

一方で、企画財政部と韓国銀行は、「物価に重点を置いた通貨政策には限界がある」としつつ、最近の経済状況について否定的な評価を示している。

景気減速を憂慮するのは新型コロナ拡大が本格的に始まった2020年3月以降初めてとなる。

韓国政府・企画財政部は、「6月の最近経済動向(グリーンブック)で、対外環境悪化などで物価上昇が続く中、投資不振及び輸出回復の鈍化など景気減速が憂慮される」とコメントしている。

企画財政部は先月の評価でも、「ウクライナ情勢およびサプライチェーン問題の長期化などで投資不振及び輸出回復への制約が憂慮され、物価上昇が持続的に拡大している」

と否定的な診断をし、今月は更に明示的に、「景気減速が憂慮される」という表現まで追加した。

利上げと景気下支えの二兎を追えるのか否か難しい状況にある。

 

l  KOTRA、60周年

大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は、韓国経済の国際化を推進する上で、重要な役割を果たしている。

最近では特に、韓国国内の若年層の職場機会が限られる中、「若手人材の海外での職場機会提供」に関する業務も行っており、単なるものの交易発展の役割から、その業務範囲は広がっている。

そのKOTRAが6月20日、ソウル市内の本社で創立60周年の記念式典を開催した。

式典にはチャン・ヨンジン産業通商資源部第1次官、最大野党「共に民主党」のキム・ギョンマン中小企業特別委員長、イ・インホ韓国貿易保険公社社長、イ・グァンソプ韓国貿易協会副会長らが出席し、盛大に開催された。

KOTRAのユ・ジョンヨル社長は挨拶の中で、「創立60周年を迎えて、世界と未来をつなぐ韓国グローバルビジネスプラットフォームという新たなビジョン」を掲げ、韓国を代表する貿易・投資支援機関としてグローバルビジネスをサポートすることで国民経済に貢献し、貿易・投資の未来をリードするプラットフォームとして更に発展したいとコメントしている。

 

[主要経済指標]

1.対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,289.560(前週対比+1.74)

台湾:1米ドル/29.69ニュー台湾ドル(前週対比+0.08)

日本:1米ドル/135.09円(前週対比-0.28)

中国本土:1米ドル/6.6878人民元(前週対比+0.0134)

 

2.株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,366.60(前週対比-74.33)

台湾(台北加権指数):15,303.32(前週対比-337.94)

日本(日経平均指数):26,491.97(前週対比+528.97)

中国本土(上海B):3,349.747(前週対比+32.961)

 

4.中東フリーランサー報告13  

 

元三井物産戦略研究所研究員の大橋誠さんからレポートを頂戴しましたので共有させていただきます。 大橋さんからは下記のメッセージを頂戴しております。

 

「久しぶりの中東フリーランサー報告をお届け致します。この3カ月間は、世の中はウクライナ戦争一色で、耳目はそちらに集中してしまい、コロナも色あせて見えるほどでした(実際ウクライナ戦線でコロナの影響はどうなっているのか?)。そうした中でも中東はしたたかな動きを見せていますが、これは国際情勢とも大きく関連しています。中東は決して辺境ではありません(静養休暇の対象地域ではありますが)。激しい変化の中で3カ月前の出来事など、はるか昔に思われるかも知れませんが、逆に今から振り返れば理解できることもあり、関連のエピソードを整理して纏めてみました。読者の皆様には旧聞に属することが多いと思いますが、この激動の中にあっての中東の姿を一部なりとも把握するお役に立てばと願う次第です」

 

5.イスラエル大使館情報 フードテック&サイバーセキュリティ 

 

イスラエル大使館から下記情報を入手しましたので共有させていただきます。

 

  1. ヴィーガン仕様の「スモークサーモン」原材料は!?

 

イスラエルに拠点を置くフードテック企業「SimpliiGood」において、藻類のスピルリナを使った植物性のスモークサーモンの開発が佳境を迎えています。

https://israel-keizai.org/news/simpliigood/

 

  1. サイバーセキュリティ勉強会 開催:78日 

本エグゼクティブ勉強会では、中学生時代に天才ホワイトハッカーとして名を馳せた多摩大西尾客員教授だからこそ語れる、経営層が知っておくべきポイントと問題への向き合い方を解説します。

https://israel-keizai.org/events/event/cyber_security_study_by_sentinelone/ 

 

6.メディアの皆様向けプレスリリース(ジャパンボウル世界大会) 

 

前回のニュースレターでお伝えしましたジャパンボウル世界大会ですが、外務省や国際交流基金、JICAからもオブザーバー参加をいただくことになりました。 

メディアの皆様におかれましては是非本大会を取り上げて頂ければ幸いです。 

何卒宜しくお願い致します。

 

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