ニュースレター国内版 2021年・春(262号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第262号)

 

1. 選挙法改悪に物申す企業経営者

2. テックカンパニーの社内矛盾と、その是正の在り方

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

4. 寺島実郎さんのメディア出演情報

-------------------------------------------------------------------

1.選挙法改悪に物申す企業経営者

 

先の大統領選においてトランプ前大統領と共和党幹部は郵便投票などの投票手続きに不正ありとして抗議がなされたことは記憶に新しい。実際の投票方法は各州の州法で定義されるが、今月、ジョージア州では投票法選択の自由を大きく制約する新たな投票法が共和党与党の州議会で承認され、また同様の物議を呼ぶ州法がいくつかの州で審議されている。こうした共和党主導の州の動きに対し、有名企業を含む100社を超える企業のCEONFLのオーナー等が410日、オンラインで集まり、この新たな投票法の動きを民主主義に対する重大な挑戦とみなして如何なる対抗策が打てるかを議論したとワシントンポストが報道した。対抗策のオプションとして、かかる州法を支援する議員への献金を控えたり、当該州への投資を遅らせるといったものがある。このような民間サイドの動きに対し、上院野党共和党院内総務のマコーネル議員(ケンタッキー州選出)は「企業は政治に足を踏み入れるべきではない」と警告のメッセージを送っているこのジョージア州の州法が貧困層や有色人種の投票を困難にするものであるとして反対した大手企業にはコカ・コーラやデルタ航空、シティーグループ、ViacomCBSUPS等がおり、加えてメジャーリーグベースボールも抗議し、今夏ジョージア州で予定していたオールスターの試合をコロラド州にて行うと発表した。

 

これに対し、トランプ前大統領はこれらの企業や組織の提供する製品やサービスをボイコットするよう保守層に呼びかけを行っている。上述の410日のzoom会議はアメリカンエキスプレスの前CEOKenneth Chenault氏や大手医薬品メーカーのMerckCEOKenneth Frazier氏によってリードされる形で進行し、ジョージア州をはじめ、幾つかの州でみられる新たな選挙法が投票を差別するものであるとして一致団結して反対することを働きかけたという。デルタ航空の他、アメリカン航空、ユナイテッド航空、スターバックス、スーパーのターゲット、リンクトイン、ジーンズのリーバイス、ボストンコンサルティング等の大手と共に、アトランタファルコンズのオーナーのArthur Blank氏もこの会議に参加した。共和党が支援するこの一連の新たな新選挙法は、期前投票などで票を単に投じられる投票箱を禁じたり、投票期間を制限したり、不在者投票を制限したり、投票者の身元確認の要件を強化したりするもので、既に5つの州法が可決されており、また24の州で55もの制限法が審議される予定にある。 

 

14日には新たにGMやフォードを含めミシガンに本社や拠点を置く30社の幹部が共同でこの共和党肝いりの新たな選挙法を非難する声明を発表している。企業の目だった抗議活動は2016年にノースカロライナ州がトランスジェンダーの人が、自分が認識する性別の公共トイレを使用することを禁じる州法に対し抗議したり、今年1月の議会襲撃事件後、大統領選の結果に対する疑念を訴え続ける議員への献金を取りやめる企業が相次いでいる。 

 

以前のニュースレターでもお伝えしましたが、人権問題や民主主義に関する物議を醸す政府や州政府の判断や決定に対し、企業のリーダーが積極的にモノ申さないと、意識の高い顧客や社員から不満や批判が出てくるという構図もあって、常に政治にアンテナを張っておく必要があるようです。

 

2.テックカンパニーの社内矛盾と、その是正の在り方

 

バイデン政権はシリコンバレーに象徴されるテックカンパニーの商慣行を独禁法の観点からチェックすべくホワイトハウス内はもとより司法省高官に巨大企業への独禁法適用論を展開してきた専門家を布陣している。それに加えてバイデン政権はトランプ前大統領に奪われた多くの労働者の支持を取り戻すべく労働者による組合結成を容易にするPro Actの議会通過を図ろうとしている。330日に発表された2兆ドルものインフラ投資プロジェクトの中でも労働組合組成を促す条項が含まれている。 

 

実際、バイデン大統領は大統領就任後の2月にアラバマ州のアマゾンの倉庫に勤める労働者が組合を結成しようとする動きに対し、ツイッターのビデオメッセージで「労働組合がミドルクラスを築きます」と、その組合結成の準備活動を称賛した。ところが、先週9日、この組合結成のための従業員投票において労働組合結成案は大差で否決された民タクのUberLifytは昨年11月、両社のドライバーを社員と同等の時間給や社会保険補助を行う職種のカテゴリーから外す州法の成立に成功している。両社はロビーング費用では数百億円を投じたと言われている。テックカンパニーはこれまで従業員に高い給与や快適な職場環境、手厚い福利厚生を提供することで、資本家・経営者と従業員の対立の構図を回避できているかのように見えていた。ところが、GAFAに象徴されるデジタルテックカンパニーは組織の肥大化の陰で技術部門でも非正規社員を活用し、ドライバー、倉庫集配員といったホワイトカラー以外のエッセンシャルワーカーを多く抱えるようになり、例えばグーグルでは非正規社員の方が正規社員よりも多くなっている。これら非正規社員の待遇が正社員と著しく異なることや、エッセンシャルワーカーの処遇が劣悪であることに関し、内部告発が出ている。例えばアマゾンの商品配送担当のドライバーは、会社からの生産性のノルマが高く、それを満たすためには配送先でトイレを探したり借りる時間が取れず、車内に空き瓶を持って用を足している様子が全米で知れ渡った。そうした告発が大きく取り上げられるたびにテックカンパニーは時給を引き上げるといったパッチワークを行ってきた。例えばアマゾンは最低時給を15ドルにまで引き上げている。 

 

一方、今回のアマゾンのアラバマの倉庫労働者の組合結成の活動に対して、会社側は直接的に或いは間接的に組合結成阻止の働きかけを従業員に対し行ってきている。テックカンパニーは巨大化すると共に、国際課税に反対するロビーング活動など政治力も大いに発揮しているが、トランプ政権で既に独禁法の観点から分割化を含めた政治圧力が高まる中、バイデン政権となって労働組合組成を通じた経営への圧力が加わる可能性が出てきている。今月から日本では中小企業でも同一労働、同一賃金の適用が始まりますが、アメリカでは遅ればせながらテックカンパニーの力を制限することが議会でも超党派の方針となりつつあり、共和党がどこまでバイデンの進める労働組合結成法の改正を支持するかが注目されますね。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  台湾海峡のリスクを表明する蔡英文政権

蔡英文政権で安全保障分野に関わる各部門は、立法院・外交国防委員会に周辺情勢に関する報告書をそれぞれ提出した。そして、台湾国防部は、「台湾海峡で軍事衝突のリスクが高まっている」と明記し、強い危機感を示している。

 

l  香港情勢

英国に移動した香港の民主化活動家である、深セン生まれ、イェール大学出身の羅(ネイザン・ロウ)氏は、英国に政治亡命を申請していたが、これが英国政府によって許可される見通しとなっている。一方、香港の逃亡犯条例改正案を巡る2019年以降の反政府デモに関係する逮捕者が、これまでに1万242人にのぼったことが、香港・司法当局が立法会の財政委員会に提出した資料で明らかになったと香港マスコミは報じている。

 

(2) 韓国/北朝鮮

l  世界一位が続く造船受注

造船・海運市況の分析機関である英国のクラークソン・リサーチが4月6日までに発表した本年3月の世界全体の新造船発注量は520万CGT(標準貨物船換算トン数、133隻)となっており、このうち韓国は286万CGT(63隻)を受注している。韓国のシェアは55%で、1月と2月に続き世界1位となっている。2月に発注のあった超大型オイルタンカー(VLCC)14隻は全て韓国勢が受注している。韓国は1万2,000TEU(1TEU=20フィートコンテナ1個分)以上の大型コンテナ船34隻も受注するなど、主力船種が好調となっている。3月の受注量2位は中国本土で219万CGT(63隻)、次いでドイツが7万CGT(1隻)となっている。同月の世界の発注量は前月対比76%、前年同月対比320%、それぞれ増加し、単月ベースで2015年6月以来の高水準となっている。また、これにより、本年1~3月の累計発注量は1,024万CGTとなり、このうち韓国が532万CGTを受注し、シェアは52%となっている。続いて、中国本土が426万CGT(シェア42%)、日本が35万CGT(4%)となっている。

 

l  次世代戦闘機KF21試作機公開

韓国が開発する次世代戦闘機である「KF21」の試作機が4月9日に初公開されている。韓国国防産業の威信をかけた初の準国産戦闘機は2026年の完成を予定とされている。国防産業を成長産業の一つとする韓国の動きはいよいよ本格化していると見ておきたい。尚、この戦闘機の開発に関しては、共同開発国があり、その共同開発国であるインドネシアの分担金拠出が滞っており、開発や生産の遅れが不安視されているという指摘もある点、付記しておきたい。

 

[主要経済指標]

1.    為替市場動向

韓国:1米ドル/1,120.07(前週対比+7.67)

台湾:1米ドル/28.44ニュー台湾ドル(前週対比+0.05)

日本:1米ドル/109.65円(前週対比+0.83)

中国本土:1米ドル/6.5516人民元(前週対比+0.0107)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):3,131.88(前週対比+19.08)

台湾(台北加権指数):16,854.10(前週対比+282.82)

日本(日経平均指数):29,768.06(前週対比-85.94)

中国本土(上海B):3,450.677(前週対比-33.715)

 

4.寺島実郎さんのメディア出演情報

 

寺島実郎さんのメディア出演情報を入手しましたので皆様と共有させていただきます。

 

TOKYO MX1「寺島実郎の世界を知る力」

【第3日曜日】第7回放送:418日(日)午前11時~

番組前半では、IMFより先週発表された最新の世界経済見通しを元に、日本及び世界経済の展望について分析します。2021年の成長予測がほとんどの国で上方修正され、株価が異様な「V字回復」を見せているなか、日本における家計消費支出は、ピーク時の水面下を推移する状況が続いております。最新のデータをもとに、21世紀に入って起きている消費構造の変化について、寺島独自の視点で詳しく掘り下げます。

 

後半では、これから3回に渡って「日本とロシア」をテーマに踏み込みます。今回は、1819世紀にかけての日本とロシアの関係という視点から、

1853年にペリーが来航する半世紀以上も前から日本に接近しているロシアの背後にある歴史的な構造や北海道とロシアの歴史的な相関について、寺島ならではの広く、深い視座で踏み込みます。ぜひご視聴ください。

 

【第4日曜日】「対談篇 時代との対話」第1回放送:425日(日)午前11時~

<ゲスト>:細川護熙氏(元内閣総理大臣、公益財団法人永青文庫 理事長)

東京・目白台の永青文庫にて、細川家所蔵の貴重な史料や戦後日本の政治の歩みに触れながら、『日本人と文化力』をテーマに対談を致しました。

細川家に代々引き継がれている様々な史料や伝承されているエピソード等から歴史において細川家が示している存在感の大きさについて触れ、

細川護熙氏が薬師寺に2019年に奉納された「慈恩殿障壁画」(全113枚、総長157.72メートル)の一部を紹介しながら、日本人の美意識・文化力の涵養の重要性について、現代社会に問いかけます。

 

また、内閣総理大臣として国を率いておられた時期・時代について振り返り、現在コロナ禍で取り組んでおられるシングル・マザー支援など、

細川氏のこれまでの歩みやご活動に触れながら、現代の政治や社会への危機感について、寺島との対談を通じて深く掘り下げます。

ぜひご視聴ください。

 

第3日曜日の「世界を知る力」の第1回~第6回までの放送につきまして、おかげさまでYouTubeでの再生回数が合計66万回以上となりました。日本国内にとどまらず、米国、東南アジア、欧州、南米など海外在住の方にもご視聴頂き、大変多くの反響を頂いております。今月から放送開始となります第4日曜日の「対談篇」と併せまして、ぜひ皆様のネットワークご関係者へ、引き続きお知らせ頂ければ幸いです。

 

2021/4/18(日)11:0011:55

TOKYO MX1 「寺島実郎の世界を知る力」 第7回

 

2021/4/23(金)06:45頃~

NHKラジオ第一 『三宅民夫のマイあさ!』

※うち、「経済展望」コーナー

 

2021/4/25(日)08:00

TBS系列「サンデーモーニング」

 

2021/4/25(日)11:0011:55

TOKYO MX1 「寺島実郎の世界を知る力-対談篇 時代との対話」 第1回

ゲスト:細川護熙氏(元内閣総理大臣)

 

2021/4/27(火)06:03頃~

TBS系ラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」

※うち、「今朝のニュースピックアップ」コーナー 全国33局ネット

 

2021/5/4(火・祝)22:0023:00

BS日テレ「深層NEWS

 

2021/5/9(日)08:00

TBS系列「サンデーモーニング」