ニュースレター国内版 2021年・冬(259号)

日賑グローバル・ニュースレター国内版(第259号)

 

1. トランプ前大統領の過去一か月の様子

2. アジア系への嫌がらせに抗議するリン選手

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化 

4. 中東フリーランサー報告5

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1.トランプ前大統領の過去一か月の様子

 

トランプ前大統領が228日にメリーランド州オクソンヒルで行われたConservative Political Action Conferenceにおいてスピーチを行い1カ月ぶりに支持者の前に姿を現した。スピーチの内容は既に多くのメディアが伝えている通り、バイデン政権の政策を非難しつつ2024年の出馬を支持者に期待させるもので予想通りの内容と見られている。 一方、ワシントンポストは、この1か月間の彼の様子を探りながら、如何にトランプが引き続き共和党に多大な影響力を保持しているのか、その様子を記事にした。ここ一二週間で、共和党全国委員会委員長や下院共和党トップとNo.2、及びその他の幹部は列を作ってフロリダ州のマルアラーゴのトランプのリゾート施設を訪れ、トランプへの陳情や打診、要請を行っている。 

 

その意味では、訪問場所がホワイトハウスがマルアラーゴに変わっただけで、党にとってはトランプは事実上のリーダーのままである。2016年と昨年の夫々の大統領選選対本部長及び副本部長が既に彼の下に集まり、正式な政治顧問としての支援体制も構築されており、新しいスーパーPAC(政治献金受領口座)を設け、その資金で彼が憎む候補者を中間選挙予備選において追い落とす体制を取りつつある。同予備選に立候補が予定される候補者の過去の言動を洗い出し、トランプ大統領に批判的であったかどうかの調査を既に開始しているという。弾劾裁判に賛成投票した共和党オハイオ州選出のアンソニー・ゴンザレス下院議員に対する刺客を身内から送り込むことを先週決めている。 

 

一方、政策面では2024年の大統領選でも主題となるアメリカファーストの方針において、具体的には国境警備と貿易でトランプイズムを強調するという。2024年の共和党の大統領候補として誰を望むかというストローポルと呼ばれる非公式の世論調査では予想通りトランプがトップとなっている状況下、トランプに反対する「共和党有権者の会」の創設者は、自分たちが僅か10%程度の勢力であると正直に語る。来年の中間選挙での共和党勝利のために、党幹部や接戦地区の共和党候補予定者はトランプの下を日参して応援を仰ぎ、一方、党内でトランプに反旗を翻した議員たちは、トランプが予備選に送り込む刺客に戦々恐々の状態となるとみられる。いずれにせよ、2022年の中間選挙で共和党が今よりも勢力を伸ばし、いずれかの議会の与野党を逆転させれば、それはとりもなおさずトランプブランドの勝利とみなされる構図にあるという。 

 

今後なされる彼の演説は、移民問題解決と共に、コロナワクチンを進めたのは自分であるとの自画自賛と、学校再開を求めていく内容になると予想されている。また、“党内の裏切り者”としてチェニー下院議員とミット・ロムニー上院議員、さらには共和党上院トップのマコーネル院内総務もつるし上げかねない。「やられたらやり返す」というどこかで聞いたことのあるフレーズがトランプの信条のようで、そもそも突然2012年の共和党大統領候補予備選に名乗りを上げたのも、一説ではその前年にオバマ大統領のホワイトハウス主催のメディア懇親会で馬鹿にされたことがきっかけと記事は締めくくる。 

 

そして今は“裏切り者”叩きと、そして民主党側が彼を悪者にすればするほどにリベンジのエネルギーが高まるのだそうです。国のあるべき姿、理想、ビジョンを掲げて政策を競うのではなく、復讐の相手のレベルに合わせて自らも大統領や議会民主党のレベルに上がってやり返そうとするしつこさは異能と呼ぶべきでしょうか。

 

2.アジア系への嫌がらせに抗議するリン選手

 

米国での昨年のパンデミック発生以降のアジア系アメリカ人に対する暴行やいじめが顕著となっている中、NBAのニューヨークニックスの元ガードポジションで、現在はNBA Gリーグのサンタクルーズワリアーズでプレイするジェレミー・リンがSNSを通じメッセージを発信し話題になっている。 

 

リンは台湾人の両親の下、カリフォルニアで生まれ、NBAでは9年間第一線でプレイし、2019年のNBAファイナルではトロントラプタースにおいてゴールデンステートワリアーズを破り、アジア系アメリカ人として初めて栄冠を戴いているそうした華々しい経歴を持つ彼ですらコート上で“コロナウィルス!”とヤジを飛ばされている。ましてや一般のアジア系アメリカ人は、全国で様々な嫌がらせや暴行を受けている状況にある。これはトランプ前大統領がコロナウィルスに関する反中的メッセージを頻繁に出したことにより増長されてきていると見られている。アジア系アメリカ人と太平洋島嶼国系アメリカ人に対する暴行やいじめ、差別を追跡している人権団体のStop AAPI Hateによれば、昨年3月から12月までに2800件を超えるケースが報告されている。ある韓国系の男性はカリフォルニア州のコンビニのトイレから追い回され、67歳の人は唾を吐かれ、84歳のタイ系の男性は先月サンフランシスコで受けた暴行が故で亡くなった。ニューヨーク市だけでも件数が2019年比で9倍に増えている。リンはツイートで次のように語っている。「アジア系アメリカ人を助けたいと思うなら、いじめられていても誰も助けてもらえていないようなアジア系の子供がいないか注意してみてください。 

 

また、貧困に面しているにも拘らず見落とされているアジア系アメリカ人のグループを探してください。 アジア系アメリカ人の正しい物語を語る映画やTVショーを応援してください。そして近所を歩くことすら恐れているアジア系の人々に対し何か困ってないか声をかけてあげてください」 第二次世界大戦中の抑留キャンプへの強制収容という被差別経験をした日系米人組織は、1980年代のレーガン政権時に正式に連邦政府から謝罪と賠償金を受け取っているが、その後も米国内の差別問題に対し感度高く活動されている。もともとアジア系は教育レベルが高い分、収入レベルも高く、白人労働者層を含め、やっかみの対象になっていたところに、トランプの放言や、大統領選敗戦などもあり、不満のはけ口の対象となっている可能性もある。 

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国

l  宇宙強国中国の象徴となる火星探査

中国政府は、成功すれば米国に次いで2カ国目となる火星への軟着陸と表面探査を目指す強い意欲を示している。 

既に2月10日には中国が送り込んだ探査機「天問1号」が火星の周回軌道入りに成功しており、この5~6月の軟着陸を計画している。

ハードの情報覇権争いとなる、制宙権争いを強く意識していると見られている習近平指導部は、「宇宙強国」を目標に掲げて、内外にその意欲を強く示しており、本年7月に予定されている中国共産党創立100年を前にして、火星探査を成功させ国威発揚にも繋げるという目論見を持っているのではないかとも見られている。

 

l  中国の軍事プレゼンス拡大

台湾政府・国防部は、中国軍の戦闘機、戦闘爆撃機など計11機が2月20日、台湾南西部の防空識別圏に入ったと発表している。

これに対して、台湾側は戦闘機を緊急発進させて警戒態勢をとったとも発表している。本年に入り、1月下旬にも2日連続して10機以上が同地域に進入しており、台湾に対する中国の軍事的圧力は強まる一方である。

 

一方、日本の第11管区海上保安本部(那覇市)によると、2月21日、沖縄県石垣市の尖閣諸島・久場島沖の領海に中国海警局所属の公船2隻が相次いで侵入している模様である。2隻が付近を航行していた日本漁船(乗員3人)に接近する動きを見せた為、海上保安庁の巡視船が間に入って漁船の安全を確保し、2隻に領海からの退去を求めている。また、その前日には別の中国公船2隻が一時、日本の領海に侵入したと発表している。

中国の軍事的圧力と力の論理、そして、既成事実化の動きは強まっている。

 

l  4.64%に上方修正した台湾経済成長率

台湾経済に関しては、輸出の好調により、経済が安定的に推移していると見られ、これを背景にして、台湾政府・主計総署は、台湾の2021年の経済成長率を4.64%に上方修正している。れは2020年11月の予測より0.81ポイント高く、2015年以来の好記録となるとの見通しである。そして台湾国内では、台湾の経済パフォーマンスについて、「確固たる基盤と安定した成長が予想されている。」との強気な見方が出てきている。

 

(2) 韓国/北朝鮮

l  初の軽空母建造へ

韓国政府・防衛事業庁は2月22日、徐旭国防部長官の主宰で防衛事業推進委員会を開催し、韓国国内での研究開発によって、軽空母の設計と建造を行う事業推進基本戦略を議決したと発表している。

 

これにより、韓国は2022年から2033年までに計2兆300億ウォンを投じて軽空母を建造し、戦力化することとなる。

軽空母は国防部が2019年8月に策定した「2020~2024年国防中期計画」に設計計画が反映され、昨年8月の「21~25年国防中期計画」に概念設計と基本設計計画が反映されたものであるが、建造の是非を巡って韓国国内では、賛否が分かれ、今年の国防予算52兆8,401億ウォンには関連予算として「研究用役費」名目の1億ウォンのみが反映されていたものである。

 

防衛事業庁は、「垂直離陸型戦闘機を搭載して多様な安保の脅威に迅速に対応し、紛争が予想される海域での挑発を抑制するために韓国軍初の軽空母を確保する」と説明している。

 

l  加徳島新空港建設を推進する文大統領

韓国国内では、新空港の建設に関して様々な見方が出ている。こうした中、文大統領は、南部・釜山地域にある加徳島新空港予定地を訪問し、「必要な支援を惜しまない」とコメントしている。そして、韓国政府・企画財政部も、建設地に関しては、具体的コメントは避けたが、「波及効果が大きい地域ニューディール事業に財政出動を伴う支援策を展開する」ともコメントしている。

 

[主要経済指標]

1.    為替市場動向

韓国:1米ドル/1,125.81(前週対比-23.07)

台湾:1米ドル/27.87ニュー台湾ドル(前週対比+0.05)

日本:1米ドル/106.35円(前週対比-1.02)

中国本土:1米ドル/6.4601人民元(前週対比-0.0064)

 

2.    株式動向

韓国(ソウル総合指数):3,012.95(前週対比-94.67)

台湾(台北加権指数):15,953.80(前週対比-387.58)

日本(日経平均指数):28,966.01(前週対比-1,051.91)

中国本土(上海B):3,509.080(前週対比-187.088)

 

4.中東フリーランサー報告5

 

元三井物産戦略研究所シニアフェローの大橋誠さんから掲題の報告を頂戴しましたので皆様と共有させていただきます。 

大橋さんからは以下のメッセージを頂戴しています。

 

いつもご愛読ありがとうございます。1月に2本発出してのんびりしていたら、2月がアッと言う間に終わってしまい、3月発信となってしまいましたが、2月に作成したレポートをお送り致します。本当はサウジアラビアの(特にMbS皇太子の)新政策発表にフォーカスしていたのですが、その前段にイランやUAEのコロナ対策を書いている内に、アブダビの軍事見本市IDEXに筆が及ぶに至り、今回はこれで纏めることと致しました。サウジについては続報します。

 

と言うことで、今回はコロナ記事で気が滅入るかもしれませんが、どうかお付き合いください。

詳細の報告書はこちらをクリックしてください。

 

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